2014年12月24日

若返れば、それでいいのか...。

三菱倉庫ビル(三菱倉庫江戸橋倉庫)…。


三菱倉庫ビル001.JPG

  
下層部に事務所、中間部に倉庫、最上部に食堂、といった感じで、
事務所と倉庫が一体になった、新しい都市型倉庫として、
1930年(昭和5年)につくられた建築です…。


日本橋川のすぐそばにあるせいか、
全体が、
客船のイメージになっているのだそうです…。

  
横方向に長い、全体のフォルム…。
優美な曲面…。
リズミカルに並んだ窓…。
そして、
その上に突き出した、独特のかたちをした塔屋…。

  
確かに、
豪華客船といった感じの、堂々たる雰囲気を持っていました…。


三菱倉庫ビル002.JPG


数年前から、再開発のために、
この建築の外観の70パーセントを保存した上で、
その上部に、高層のオフィス棟を建設する、
とのことで、工事をしているようでした…。

  
先日、久しぶりに、近所まで行ったので、
どんな風になったのかなあ、と思い、
寄ってみると、こんな感じになっていました…。


三菱倉庫ビル003.JPG

  
うーん、どうなんでしょうか、これ…。

  
確かに、保存したという外壁部分も大事でしたが、
客船をイメージしたという、全体のシルエットも、
同じぐらい大事だったのではないか、と思うのですが…。


三菱倉庫ビル004.JPG

  
そのシルエットの重要な要素になっていた、
あの個性的な塔屋が、
高層棟の安っぽい外壁にまぎれてしまい、
何が何やら、わからなくなっていて…。

  
もう、船ではなくなっていました…。


三菱倉庫ビル005.JPG


本当であれば、
元の建築のシルエットを守るために、
高層棟は、
もう少し塔屋から離してつくるべきだと思います…。


ただ、もしもそれが難しいのであれば、
せめて、高層棟は、
塔屋とは、全く別の色、全く別の素材などにして、
塔屋と、建築全体のシルエットを、際立たせて、
元の建築の、面子を立ててあげないといけないのではないか、
と思いました…。


三菱倉庫ビル006.JPG


歴史的な建築へのリスペクトを欠いていると思います…。




こうなってくると、
その近所にある、こちらはどうでしょうか...。


野村證券日本橋本社ビル(日本橋野村ビルディング)…。


日本橋野村ビル001.JPG


1930年(昭和2年)に完成した歴史的な、この建築も…。


地域の大型再開発の一環として、
リニューアルする、という計画が、
先日発表されていました…。


日本橋野村ビル002.JPG
 

新聞記事によると…。
 
「再開発は敷地内にオフィスを中心とする超高層ビルを建設する構想。
 戦前に建てられた野村証券の本社ビルは保存し、
 美術館やレストランとして活用する案が有力」…。
  
「大通り沿いを中心にレトロな外観をなるべくそのまま残して改装するが、
 ビルの一部は解体。
 公開空き地として遊歩道なども整備する」…。

との事でした…。

 
超高層ビル、美術館やレストランとして活用…。
なるべくそのまま残して、解体…。
公開空き地、遊歩道…。
 

なんとなく、
どうせ、つまんなくなっちゃうんだろうなあ、
という感じが、文面から濃厚に伝わってきてしまうのですが、
気のせいかな...。
  



この建築が出来た頃…。
  

ヨーロッパの建築は、
それまでの歴史主義的な様式から、
新しいモダンデザインの時代へと変わりつつありました…。
  

そのような潮流に反応して、日本でも、
それまでの歴史主義に、モダンなセンスを取り入れた、
ちょっと風変わりな建築が、生まれていました…。
  

そうした建築は、
「自由様式」なんて呼ばれるそうなのですが、
そうした流れを代表する一人が、
建築家、安井武雄です…。


日本橋野村ビル003.JPG
 

この日本橋野村ビルディングも、
「国籍不明を極める様式をモダンなセンスでたくみにまとめてみせた」、
というヘンテコなものです…。


日本橋野村ビル004.JPG
  

いわば、
それまで千年以上にわたって続いていた、
歴史主義的な様式の、厳格な約束事が、
今まさに崩れ落ちようとする瞬間に出来た、
熟し過ぎの果実、といった感じなのだと思います…。

 
このような、
綱渡りのように微妙なバランスの上で、
偶然のように成立している建築というのは、
もう二度とつくることが出来ないのではないか、と思います…。


日本橋野村ビル005.JPG


再開発によって、
一部を壊して、若返らせることで、
こうした微妙な味わいの果実よりも、
もっと美味くなるというのであれば、いいのですが…。
大丈夫なのでしょうか…。


腐りかけが一番美味い、
なんてことも言いますし…。



posted by k_nakama at 18:28| Comment(4) | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
三菱倉庫ビルは、かつての職場の近くにあったので
横を通る度に見惚れていたものです。
”客船”だったんですね。なるほど納得。
しかし、無残なことに……

外観を保存したということで思い起こしたのは
KITTEが入っているJPタワーです。
旧東京中央郵便局舎の一部分を保存して
その上にタワーが建っているのですよね。
あちらの方が幾分マシかもしれません。

古い建物の雰囲気を壊さずに残すというのは
やはり難しいことなのですね。
Posted by nbm at 2014年12月24日 23:20

 客船とはなるほど!ですね。

 アントです、ども。

 最上の塔屋が操舵室・・・って感じでしょうか?
 見事だと思います。

 しかし、確かに改築後は・・・う〜ん、ってなりますね。

 特に個人的には新しい歌舞伎座も好きではないので、同じような印象の改築の仕方はこれからのヘンな「流れ」が出来そうでイヤな予感がします。

 本当にもう少しでいいから、それまでの建物に対するリスペクトが欲しいと思います。
 o(>_<)o

 でわでわ。
Posted by アント at 2014年12月25日 01:17
nbm さま

こんにちは。

たしか日本銀行本店の話を書いた時に、
かつての職場が近くだった、というお話をされていましたよね...。
この三菱倉庫ビルも、普段から見慣れていたのでしょうね...。

あの辺り、久しぶりに訪れたのですが、
あちらこちらで工事をしていました...。
数年後には、全く違う街になっていまいそう...。

どうしても高層化したいということになると、
今のところ、KITTEのビルのように、
歴史的な建築と新設の高層部分は、全く別の感じにして、
無関係な感じで併存させる、という方法しか、
多分ないのでしょうね...。
三菱倉庫ビルもそうすればよかったのに、と思います...。

コメントをどうもありがとうございました。
Posted by k_nakama at 2014年12月25日 15:02
アント さま

こんにちは。

この三菱倉庫ビルが出来た頃の、
流行のスタイル、アール・デコ調は、
なぜか客船のイメージと強く結びついているみたいで、
アントさんの地元の氷川丸の内装などが、
アール・デコの代表のひとつと言われています。
そうしたイメージの延長で、
建築全体を客船のイメージでつくってしまったのが、この建築、
ということなのでしょうね...。

歴史的な建築のイメージを損なわないようにしながら、
現代の都市に合わせて高層化したい、
となった時には、本当に難しいですよね...。
私も、歌舞伎座は前の方がいいなあ、とは思うのですが、
どうしても高層部分を新設したい、ということなのであれば、
あのように、
古い部分と、新しい高層部分は、全く別物、
という感じでデザインするしかないのだろうなあ、と思います...。

この三菱倉庫ビルのように、
どっちつかずの似たような色合いのものを、
接近して建ててしまう、というのが、
多分、最悪の選択、という感じがしています...。

コメントをどうもありがとうございました。
Posted by k_nakama at 2014年12月25日 15:14
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